「・・・ん・・・」

とある少年が目を覚ます・・・。辺りには草が多く生えており、奥には森がある。
ここはインフェリア。平和に溢れていて、自由の国。国民の皆が幸せに暮らしている・・・
その少年はラシュアンの森で寝ていた。森には生物が多くいて、小鳥の声がよく聞こえる。生物が栄えていたが、奥には凶暴な生物も多くいる。しかし、その少年はそれを知って奥に毎日行く。それには・・・

「さてと・・・今日も狩るかな・・・」

彼は野生の生物を狩って生きている猟師だった。彼は、今日も寝起きで眠そうな顔をしながら、森の奥へと進んでいった。彼は、動物にも好かれているか、毎日森にいるか、動物が多く寄ってくる。もう動物達も彼の事を覚えているのだ。
彼は生物達を軽く撫でて、ポケットから飴を出してビリッと開けて辺りに撒く。動物達はそれをいそいそと食べていた。食べている間に彼は奥に進んでいった。
彼は毎日のように狩りをしているせいか、もう狩り慣れている。今日も凶暴な生物を見つけては持っている剣で斬り、それを持ち帰っている。
そして、狩り終えて、さっきまで寝ていた場所まで戻った。そこで、持っていた生物をそこに置いて、草の上でまた寝ようとした。しかし、遠く離れた場所から・・・

「リッド〜!」

彼の名前を呼ぶ声がした。その声を聞いた瞬間、リッドは草から起きて声があった場所に向く。そこにはリッドと同年齢くらいの少女がいた。

「やっぱりファラか・・・」

それを予想したように言う。確かに今はこのラシュアン付近にはリッドはファラしか同年齢の子はいなかった。リッドとファラが会う時は、この場所で会う。目印もなく辺りには同じ風景ばっかりなのに、2人にはここが分かるのだ。幼馴染みであった2人は昔から一緒が多く、今も一緒にいろいろとやっている。
そして二人は何も言わず歩いていき、二人は思い出の高台に着く。高台と言っても木で建てられていて15mくらいの高さしかない程度の高台だった。だけど、そこが2人の思い出の場所。10年前くらいからずっとリッドはここに来ている。たとえ1人でも―。
二人はそこを上った。たとえ15mくらいでも、上がれば森全体は普通に見回せるし、辺りの山だって多く見える。この風景が二人は大好きだった。

「お久しぶり! どう?猟師の仕事はやってるの?」

何よりも先に仕事について聞いた。ファラはやっぱりリッドがちゃんとやっているのか―。と心配する気持ちが大きかった。 そういわれて、躊躇いなく・・・

「今日必要な分取るだけだよ 別に苦労しねぇよ」

手で頭を軽くかきながら言った。その顔からは余裕としか出ていなかったため、ファラは安心した。昔から心配をよくするファラには、リッドは迷惑をかけたくないようだった。
絶対迷惑はかけたくねぇ―
と、その時、心の中で思った。

「さすがリッドだね〜!相変わらずやるぅ〜!」

そう言って、手を上に出す。その手を見た瞬間リッドも手を出してパチンと手を軽く叩く。そして、ファラは笑った。
ファラの笑顔・・・これは・・・潰したくない―。
リッドも、幼馴染みでも分かりづらいくらい僅かに、笑った。しかし、どれだけ僅かでもファラには分かった。でも、ファラはリッドが笑った事は言わなかった。
そして、二人は最近の話を始める。ファラが、リッドが、何をしていたか。最近のインフェリアでの出来事。そして、二人と同じ幼馴染みの話―。
楽しいことばかり話していたが、いきなりリッドが・・・

「ファラ・・・最近・・・空が暗いんだ・・・」

そう言って、リッドが空を向く。ファラも空を向いたが、特に色が暗くなったとはファラには思えなかった。その瞬間、それが当たっているのか、はずれているのか・・・知らせるような風が吹いた。二人の髪や服がなびき、いきなり雰囲気が変わったと思えた。
そっか。リッドは毎日空を見てるから分かるんだ。私には見えないけど―。
ファラはそう感じた。しかし、そう感じたと同時に少し寂しさも紛れていた・・・。
しかし、そんな寂しさなど微塵にも見せずに。

「そっか、暗いんだ・・・。」

今の発言には、寂しさが紛れていたが、風がそれを運んでくれたのか、リッドには分からなかった。空を向いているリッドには見えないように笑い、一緒にまた空を向く。
何もかも、全てが生きている―。

そろそろ、高台からリッドは降りようとした。ファラはまだ空を見ている。そんなファラを見てリッドはなぜか少し心の思いが変わった。せっかく空を見ているんだ―と思い、こっそり降りようとしたが、1歩歩いた瞬間地面の木の板がギシギシと音が出てしまったので、ファラが気づいてしまった。

「もう、帰るの?・・・」

そう言った瞬間、少しファラに寂しい顔が見えた。リッドはその少しの顔を見たせいで、帰るつもりだったのに、帰りづらくなってしまった。繋がれた鎖の様に硬くなった―。しかし、いつもはそろそろ家に帰ってる時間なので・・・。

「あ・・・あぁ・・・ゴメンな、ファラ」

そう言って、一歩一歩歩いていき、階段を下りようとした。
その瞬間、さっきまで吹いていた優しい風とは違って、寒気のする風が吹いた。何か危険を運んでる風の様に―。
そして、悪い気持ちを持ちながらリッドが高台から離れていく・・・

「はぁ・・・寂しいな・・・何かおきないかな〜・・・」

ファラは空をまた向く。本当に目を凝らしてよく見ると一点辺りの空だけ周りの空とは少し暗いことが分かった。
本当に・・・暗い―。
ファラ1人になりながらも、ずっと空を見ていた。その時に見つかる新しい発見が好きだから・・・。
そして、空を見てる間に夜になり、それでもずっとファラは居た。今度は空じゃなくて星を探している。見ているうちに遠くから火の煙が出てるのが見えた。リッドが獲物の焼いてる・・・。と思いその方角を見つめていた。鎖は、簡単には外れない・・・。
そして、いろいろと見ているうちに高台の上で寝てしまった。いろいろと見れて嬉しかったのか、その寝顔には悲しみが無かった。
そうして、朝になった。

「―ァラ!」

誰かが私を呼んでいる?・・・なんでだろ・・・ここを知ってるにはリッドだけ。
だから・・・起こすのもリッドが・・・
そう。ここを知っているのはリッドだけ。そう思い、目をこすって少しずつ体を起こしながら起きる。そこには、少し叫び疲れたようなリッドの姿があった。

「あ。リッド おはよ〜」

本当は疲れているなら心配するべき所だったかも知れないが、それは言わなかった。いつも元気でいないとリッドに不思議らしく思われちゃうから変だと思ったから。

「おはよ〜・・・じゃねぇだろ・・・。それより、ずっと昨日からいたのか?」

うん―
ファラは首を縦に振った。目には幸せが写っていたが、よくよく考えるとこんなにこの高台にいたのは初めてだった。
そして、二人は立って、隣同士に肩をつけながら、また空を見上げる。しかし、2人とも見ていたのは空の一部にある暗い空・・・。一体何を表しているのか・・・。
そして、ずっと見ているとその暗い空の場所から一点だけだが、光ったのが見えた。二人はそこをジーっと見ていたので、当然分かった。

「今の光・・・」
「見えた光・・・」

二人が同時に言おうとしたが、被ったので言葉がそこで止まった。しかし、この後は昔から先にファラが言っていたので、リッドはそこで黙った。その先を喋るまで・・・。

「今の光・・・幸せの流れ星だったらいいね・・・」

―あぁ、そうだな
心の中で深く思い、二人はまたその光を見る。
しかし、さっき見たときよりも何故か光が大きくなったのがリッドには分かった。その時、また昨日ファラから離れる時に出てきた寒気のする風が漂った。そして、それをリッドは見続けて今度はゴゴゴ・・・と音まで察知できた。

「あれ・・・こっちに向かっているぞ!落ちる! 早く降りろ!!」

風に導かれるようにこっちに光が近づいている。二人が2mくらいまで降りた所で、その光は更に加速した。そして、ドーーーン!と大きな音をしながらこの高台のすぐ近くの森に落ちた。そのその音で震動が起きた。10年以上前からあって、古かったのか・・・。高台の展望台のような場所付近の木が折れ、こっちに落ちてくる。リッドは剣で何とかその落ちてくる木を抑えて、遠くに弾き飛ばしたが、剣を支えるのに両手を使ってしまい、10mくらい下の地面に落ちた。ファラには落ちた瞬間砂煙が発生して、見えなかったが早く確かめるべきだと思い、焦って階段を降りていった。

「リッド!!!」

ファラが展望台で寝ていた時、起こす声よりも2倍、3倍も大きな声でリッドを呼ぶ。そして、落ちた場所に走って向かい、様子を確認する。

「ってぇ〜・・・10mも落ちたの初めてだったぜぇ・・・」

そんなリッドの声を聞いて安心するファラ。そして、手を差し伸べて、立たせる。そして、二人は思い出の高台を見た。高台の最上部だけ壊れただけだったが、それでも思い出の場所が壊れるのは悲しかった。しかし二人は悲しい顔をせず、ただ・・・黙って見ていた・・・
そこでずっと待機していると、森から動物達が逃げてきた。あの衝撃が森に入ったからだ。そして、動物達がリッドを見つけて、そこに向かって走り出す。動物達の真ん中にリッドがいた。

「動物に、好かれてるんだね」

「ま〜な・・・毎日森に行ってるからな」

そこには普段は見せないリッドの顔があった。ファラは森の奥には行ったことがなかったから、リッドのこんな顔は知らなかった。しかし、動物達はあの衝撃を恐れている。リッドは集まった動物全員の頭を撫でた。そして、暫くして動物達がリッドから離れていく。リッドは森に進もうとした。

「森に行くの?」

心配そうに言う。それはそうだ。衝撃が何か分からないし、それが凶悪な物だったら危ないからだ。しかしリッドは無言で手を振り、森の中に入っていった。ファラも、リッドを追いかけて、森の中で進んでいった。
森の中はいつもは動物達の鳴き声がよく聞こえるはずだが、今日は静かだった。森に僅かに残っていた動物もいたが、どの動物もその場で座り込んでいるだけだった。リッドはそんな動物を見るたびにその場に向かって、飴をあげたり、少し構ってあげたりと、やっている。ファラもそうしたりと試みるが、動物達は嫌っていた。やっぱり、ファラには動物はなれてなかった。
そうやっているうちに凶暴なモンスターがいる場所に着く。衝撃があったのはこの奥だった。リッドは毎日来ているから行き慣れている。何の情緒なく足を止めずに奥に進んでいく。しかしファラはここが危険といままでずっと言われており、少し進むの躊躇う・・・。リッドが止まってるファラを見て、ファラの目の前まで戻り、手を出す。それが、まるでさっき起きた事へのお返しの様に思えた。拒む意味がないファラは手を繋ぎ、進んでいく。

「・・・懐かしいね・・・手を繋ぎながら一緒に進むのは・・・」

昔のことを思い出すファラ。

「そいえば、そうだよな〜。・・・14くらいの時からファラから繋ぐの拒んだからな〜」

ファラは、少し赤らんだ。そういう時期は、手を繋いで歩くのが少し恥ずかしかったからだ。そして、リッドとファラは昔のことを思い出しながら、奥に進んだ。
凶暴な森なだけに、霧も少しかかって、太陽の光も見えなかったが、それでも足を止めること無く進む。
そして・・・進んでいると・・・

「クィッキー!!!」

ぴょこぴょこと、青色で、尻尾がかなり長い生物がリッド達の前に立つ。その生物を見たファラは、その生物を持ち上げるが、その生物の尻尾が軽くファラの頭に当てて、地面に降りた。ファラは頭に手を当てながら・・・

「私って、やっぱり動物に縁がないのかな?・・・」

そうではない。ファラにだってきっと縁はある―。
リッドも、ファラの頭に手を乗せる。そして、その生物はまたぴょこぴょこと森の奥に進んでいった。ファラが気になったので、その生物を追いかけていった。リッドも、微妙な気分でファラ達についていく。
そうして、衝撃のあった場所に着く。
二人は、そこにあった大きな機械に見とれていた。インフェリアでは到底作れないような物だったからだ。しばらく見とれていて、ファラが地面を向くと、さっきの生物が、ドレスを着た少女とじゃれている姿が見えた。その姿を見たファラはリッドの肩を叩いて、そっちに向かせる。その少女の着ている服もインフェリアには無い服だった。謎だらけの二人だったが、ファラが・・・

「・・・ねぇ、貴方は誰なの?」

と、丁寧に質問する。そして、10秒くらいその少女とファラは見つめ合い、少女が尖ったような口をして言う。

「アンルリ! ティアエムク ヤイオ フィディ アンルプウムグ トゥン!」

その言葉を聞いた瞬間、全員が黙る・・・騒ぎの音が消えたせいか、その辺りにいる凶暴なモンスターの呻き声が耳が痛くなるくらい良く聞こえた・・・。黙ってるからか、少女は、辺りを心配そうに見回る。しかし、よく見ると、手が震えていたのがリッドには見えた。凶暴な叫びだからしょうがない。リッドはそう思った。そして、リッドは少女に近づき、右手を握る・・・。その瞬間、リッドと少女の手から、光が噴出した。温かい光。そして、少女はリッドに握られた手をおでこに付けて、目は見えなかったけど、口では笑っているように見えた。そうして、リッドが握っている手を離す。握っている間だけは、凶暴なモンスターの痛い声が聞こえなかったように思った。
私だけ一人か・・・
そして、いきなり、少女が倒れる

「お・・・おい!大丈夫か!?」

倒れたように見えたが、実は眠っているだけだった。10才くらいの可愛い寝顔だった。少し、リッドが赤らめた。
ファラも昔はこんな寝顔だったのかな―。
そして、眠っているのを放置する訳にも行かないので、リッドがその少女を背負った。その瞬間、一緒にいた生物が鳴き声を叫ぶが、飴を投げて、何とか鳴き声を静めた。
リッドにとっては、言葉はわからなかったが、心の鎖が繋がったようだった。
そうして、3人はリッド達の家のあるラシュアンの村へと向かった。



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