リッドは急いでファラの家に向かって走った。走る中、さっきの戦闘での複雑な気持ちが体を震わせたが、何とか耐えながら走った。そして、ファラの家に着いて、躊躇いなくガチャっと少し大きな音を立てて開けた。
家の中は木造で、タンスやソファーなどいろいろあって、少女はソファーに寝かしておき、ファラはタンスの付近で大きな荷物を造っていた。少女はドレスのような服ではなく、ファラをお古の物を着ていた。リッドにしては、こっちの方が顔を見て断然似合ってると思った。リッドが入ってきた瞬間、ファラは気づいてこっちを向いた。リッドはゆっくりとファラに歩いて近づいていった。荷物の中を覗いてみると長旅を予定しているのか食べ物系が多かった。
「ファラ・・・やっぱりラシュアンから出て行くのか?」
それは、荷物造りしている地点で出て行くと分かっていた。だからそういうのは本来は聞くべき事ではなかった。しかし、念のためとリッドが思い、話してみた。
「うん・・・。さすがに村長の前で堂々と言っちゃったんだから」
その言葉には決意が漲っており、迷いが無かった。リッドはファラの言葉は本気だと分かり、少女の足を少し地面に置いて、リッドもソファーに座った。座ってから深く溜め息をついた。それは、あの男との戦闘のせいだった。負けた痛みよりも、守れなかった痛みが上回り、また溜め息をついた・・・。そしてファラの家を見回して、そして少女を最後に見た。
―ホントに良く寝てるなぁ・・・。
小さな体での、大きな行動。そこまで必死になる意味が分からないリッドだったが、何か大事な事があるのだろうと思った。
そして、そうして考えているうちに、ファラは支度を終えた。そして、リッドを少し見て言った。
「やっと、支度終えたけど・・・。リッドはどうするの?」
ファラは、改まった顔をしていた。
「どうするって・・・。」
やっぱり、リッドは行くとはすぐには決められなかった。しかし、ファラと少女二人でラシュアンを出ていくことがかなり心配だった。
「そっか・・・やっぱりすぐには決められないよね・・・出て行ったら、もう・・・戻れないんだよね・・・」
その言葉を聞いて、辺りの空気が一変した・・・。しかし、やっぱりリッドの返答が無かった。
「ゴメンね、リッド・・・。それじゃぁ・・・私は行くね・・・。」
ファラはさっき準備を終えた大きな荷物と、少女を背負って、部屋を出ようとした。ファラがリッドの横を通った時、お互いが悲しかったような顔を浮かべていた・・・。本当は一言何かリッドが言うべきだったが言葉が思いつかない・・・。1秒1秒がいつもよりゆっくり流れていく。足音が別々の道へと進んでいくように怖く感じた。
そして、ファラがドアの前まで歩いた所で、小さく口を開けて、リッドが言った。
「・・・ファラ・・・」
小声だったが、ファラには十分聞こえる程度の大きさだった。その声に気づいてファラはこっちを向いた。二人は軽く見つめあって少し時間が流れた。そして、リッドがその視線を外し、下を向いて答えた。
「・・・気をつけろよ・・・」
その言葉を言った瞬間、リッドは軽く口を噛み締めた。そして、もっと下を向いていた。そしてファラは軽く笑うようにリッドに言った。
「うん・・・。行って来ます・・・。」
そう言って、ドアを開けて、ファラは家から出て行った。ドアを閉めた音がした後、リッドとファラがお互いに悲しみが溢れ出した。リッドは、ソファーに一人座り、考えていた・・・。
―本当に、これでよかったのか?
口では気をつけろといったが、リッドは正直分からなくなってしまった。少しの時間、何もかもを無にするように、考え続けた・・・。
―やっぱり・・・ファラが心配だ・・・。
考えて、出てきた言葉がこれだった。確かに、ファラは昔から、仲がとてもよかった幼馴染みだった。しかし、それ以上にまたあの男が襲ってくるではないかと、恐れていた・・・。
―俺は力不足だよ・・・。だから・・・
リッドはファラの家の一気に飛び出して、村の入り口までの近道を使って走る。無我夢中に、追いかけていった。
―だから!・・・強くなりてぇ・・・
そして、村の入り口では、村を遠回りして来たファラが居た。これまでのことを簡単に振り返っていた。そして、門番の前までやってきた。その門番は無言で道を開けた。やっぱり、あの事件はもう村中に伝わっていた。その後の道が何だろうと行く。そう思ったファラはその道を通った。そして、村から1歩離れた瞬間に門番は道を封じた。これは、ラシュアンの人間ではないという戒めなのだろうか・・・。一瞬後ろを向き、完全に遮断されたと思ったファラは、もう進むしか道がなかったから、進もうとした。
―待て!ファラ!!!
その声を聞いて後ろを向いた。そこにはかなり息を荒げたリッドの姿があった。二人の間にいた門番を無理やりというくらいにリッドがどかし、ファラに近づいた。軽く息を整えながら、リッドが言った。
「俺・・・もっと強くなりてぇんだよ・・・。今はまだ未熟かも知れねぇけどさ、いずれは強くなってやるから・・・。だから・・・やっぱり、一緒に連れてってくれねぇか?」
ファラの心の中で思っていた事は、リッドもついて来て欲しいことだった。その心が今、実現され、心の中から嬉しいと思えた。そして、表情にも笑ってる顔を出して、荷物を置いて、ファラはリッドの抱きついた。そして、お互いの心の近くでファラが言った。
「うん・・・、行こうね。3人で・・・」
その言葉を聞いて、リッドも軽く笑顔が見えた。そして、リッドは準備をしてくると言って、自分の家まで一気に走っていった。その間は、村から1歩出た場所で荷物の点検などをして待っていた。そして、さっきのリッドとファラの姿を見ていた門番が言った。
「これじゃぁ、リッドも村から追い出すことになるのか?」
「それは・・・分からない・・・。でも!リッドは私と一緒に来るの!それだけだよ!」
そして、リッドは自分の家の中にもういた。家の中は、基本的に目に入るのはベットくらいだった。食べる物が全てというくらい野生動物なので、基本的に物はいらなかった。ベットで寝転がると、ちょうどいい位置に窓があり、夜になると夜空が見えた。野性的なリッドは、そういう風景も好きでもあった。しかし、リッドが家に入った理由は、隣の部屋にある物を取る事だった。そして、隣の部屋に入ると、大体地面は木の板40枚程度の小さな部屋だった。これは、昔リッドが自分で拾って作ったものだった。ファラと一緒に作って、終わった後に手形を押したのを、今でも覚えている。そして部屋の真ん中に大きな仏壇があり、いつのまにか、その仏壇の灯火が消えていた。そしてリッドは両手を合わせて祈りながら言った。
「・・・父さん・・・、旅に行って来るよ。でも、悲しまないでくれよ・・・。絶対死なないし・・・父さんの・・・形見のあの剣も持っていくからさ・・・。」
仏壇に捧げられていた剣を、リッドが取って、家を出て行った。そしてファラのいる村の入り口に着いた。少し待ちくたびれたのか、軽く体を伸ばしていた。そして、伸ばし終えた後、リッドの言った。
「んじゃ、いこっか!なんとしてもこの子を助けるよね!イケるイケる!」
そして、進んでいく・・・。誰にも負けない力を持つためにも・・・。
back next |